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2006年1月20日 (金)

ある夜の3人

夜、駅を降りると、タクシーが暇そうに客待ちをしていた。
終電を過ぎればそう暇にもしていられないのだろうが、深夜とはいえまだ電車があるこの時間帯は、あんな風に中途半端に暇なのだろう。

そんなことを思いながら家路を急ぐ。今夜は寒い。凍るようだ。

駅からしばらく歩いた頃、道路の向かい側にタクシーが来るのを待つ女性が居た。

タクシーはなかなかつかまらないらしい。寒そうだ。寒い上に何かを「待つ」という焦りは、余計に寒さを煽るのではないだろうかと、他人事ながら同情してみる。

「タクシーをお待ちでしたら、駅前にタクシーが居ましたよ」と教えたくもなるが、そう伝えて彼女が駅に着く頃には、駅前にタクシーはもう居ないのかもしれない。それにもうすぐ空車のタクシーがここを通るのかもしれない。

いっそ、自分が駅に引き返してタクシーに教えようか。いや同じことだ。駅前のタクシーがたどり着く頃には、彼女はもう別のタクシーに乗っているかもしれない。

何のことはないのだ。彼女は駅の方へ、タクシーは彼女の方へ。
あと少しお互いが進み合えば、ふたつは出会えるのだ。

そのことを、タクシーを必要としていない俺が知っている。

何か他人の運命を垣間見たような気がして、嬉しいような切ないような不思議な気分を抱えながら、俺はただ、立ち止まることなく家路を急いだ。


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コメント

何かを感じました。このエントリ。

うまく表現ができません。

でも何かコメントしたかったので・・・
(すみません)

ミサイルさん、カッコイイですね。

投稿: luckymarimo | 2006年1月22日 (日) 23:43

■luckymarimoさん

とても真面目に返信したい気分。

>何かを感じました。このエントリ。

この言葉、本当にうれしいです。

何を感じたかを具体的に言葉にしてくれなくても、何かを感じてくれたことを伝えてくださったことに感謝します。

僕にとっては具体的な言葉に匹敵する価値のあるコメントでした。ありがとうございます。

投稿: ミサイル | 2006年1月23日 (月) 01:44

毎日涙が出る・・・

一瞬で流れ落ちる・・・

一歩進めば少しの幸せがあるなら教えてください・・・

いいえ・・・じっとしていられないので前へ歩きます・・・


投稿: silkmoko | 2006年1月24日 (火) 14:15

■silkmokoさん

なるほど、悲しみで動けないのではなく、悲しいから動いてしまうのですね。理由はともあれ前に進めるのなら、いつかは普通に歩けるときが来るのかもしれません。

投稿: ミサイル | 2006年1月24日 (火) 16:59

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